腎臓内科のご紹介
北松中央病院では2名の腎臓内科医が常勤し腎臓専門外来、外来維持透析を行っています。今日は私たち腎臓内科医が最も多く診る機会のある慢性腎臓病と人工透析についてお話しします。
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)とは
腎臓病とひとくちに言ってもその原因となる病気や程度は様々です。しかしそういった細かい事は置いておいて、「とにかく腎臓が悪いですよ」という大きなくくりを作ったものが慢性腎臓病という概念です。
具体的には、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。CKDを放置しておくと、将来腎機能が著しく低下して人工透析や腎移植を受けなければ生きられない状態(末期腎不全)になる可能性があります。腎臓の異常は尿検査や採血検査をしなければわからないことが多く、症状が出た時にはすでに腎臓の機能がひどく低下していたという患者さんは少なくありません。こういった、自分では自覚できなくても検査で腎臓に異常を認める、いわゆる“隠れ腎臓病”のうちに早期発見、早期治療することが大切です。
さらに、CKDでは、心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになっており、こういった病気の予防のためにもCKDの治療は重要です。
現在日本でこの慢性腎臓病に当てはまる人は1330万人いるとされています。成人の約8人に1人にあたる数です。
CKDの患者さんを治療して末期腎不全に至る方をできるだけ減らすという事は私たち腎臓内科医の使命の一つです。
|
人工透析について
残念ながら腎臓の働きが著しく低下してしまった場合、体内に尿毒素や過剰な水分が溜まり、放置しておけば命を落とす事になります。人工透析は失われた腎臓の働きを肩代わりし、溜まった尿毒素や水分を取り除く画期的な治療法であり、末期腎不全の患者さんにとっては命綱です。我が国では29万7千人の方が透析治療を受けておられ、その数は増加傾向にあります。透析患者さんの透析や体調の管理を行うことも腎臓内科医の仕事の一つです。
人工透析には血液透析と腹膜透析という2種類の方法があります。
北松中央病院の血液浄化センターは血液透析用のベッドが40床あり、2012年6月現在122名の患者さんが血液透析を受けておられます。また、現在患者さんはおられませんが、腹膜透析専用の部屋もあり腹膜透析の患者さんの治療も行うことができます。
血液透析とは:
腕の血管に針を刺して血液をとり、ダイアライザーと呼ばれる濾過装置に通すことで血液内の尿毒素や余分な水分を取り除き奇麗になった血液を再び体に戻すという治療方法です。通常、病院で週3回、1回4~5時間程度の治療を行います。
腹膜透析とは:
お腹の中に透析液という液を溜め、お腹の中にある腹膜という膜を介して老廃物や水を取り除く治療方法です。基本的には患者さん自身やご家族がご自宅で毎日行う治療で、病院への通院は月に1~2回です。
血液透析患者さんは週3回4時間という長い時間を透析室で過ごされ、その治療は腎移植をした場合を除き一生涯に渡るため、透析患者さんが快適に治療を受けられるよう、透析患者さん専用の食堂、休憩室、更衣室を独立して設置しています(現在改築工事中)。また、お仕事をされている患者さんなどの社会復帰をサポートするために、夕方6時ごろより透析を開始する夜間透析も行っています。
透析治療は、ただ「4時間の透析を行う」というだけではなく、透析患者さんをとりまくいろいろな合併症(腎臓以外の病気)や日常生活の問題にも幅広く関わっていく必要があります。それは到底腎臓内科医だけでできる事ではありません。看護師、臨床工学技士、薬剤師、栄養士、検査技師、事務職員、ソーシャルワーカー、理学療法士など様々な部署のスタッフが、それぞれの面から一人の患者さんの透析生活をサポートしています。
~腎臓内科医からのメッセージ~
腎臓の病気は自分ではわからない間に進行している事があります。健診などで検尿異常や腎機能異常を指摘された場合には、軽視せず一度精査をうけてください。
糖尿病や高血圧は腎臓を悪くする原因の中で最も多い病気です。腎臓を守るためにもしっかり治療を行ってください。
|
|
腎臓内科 中沢 有香
久原 拓哉
|
|
腎臓病の早期発見と治療の重要性を知ってもらうため様々なイベントが世界各国で行われています。写真はキャンペーン・イメージキャラクターの「そらまめくん」です。
(腎臓はそらまめの形に似ているのです。)
|
|